「環境を作る環境」の活動と福祉への貢献を実現する場所
中延駅から徒歩1分のファブラボ品川(FabLab Shinagawa)様は、全世界に千数百箇所以上あるファブラボのひとつになります。以前、 ファブラボ神田錦町・ ファブラボ関内 様もご紹介させていただきましたが、それぞれファブラボの概念をもとに活動している別組織になります。その中でも ファブラボ品川様は、「作業療法士のいるファブラボ」として独自の活動をしています。
目次
ファブラボ発、ニードノウアとメイカソン
ファブラボ品川様が力を入れている活動の中で「メイカソン」という活動があります。Make-a-thon (メイカソン) とは、Make (つくる) とマラソンを掛け合わせた造語です。「ハッカソン」という言葉は割と馴染みがあるかと思いますが、ハッカソンもハック(hack)とマラソン(marathon)を組み合わせた言葉で、チームごとのアイデアをコンペするという形は一緒です。アイデアソン、という言葉もありますね。
メイカソンでは、「ニードノウア」(Need Knower=障害やニードのある当事者)を含む各チームメンバーが、ニードノウアが本当に欲しい物・生活を楽しく便利にするものづくりのアイデア出しをし、3Dプリンタなどのデジタル工作機械も活用し道具作りに挑みます。
アイデアはアイデアスケッチノートに書き出され、具体的になるまで練られ、創出されていきます。
片手でも返しやすいフライ返し
下の写真は、片麻痺の当事者による「好きな料理をする際、片手でも大きなものを返せるフライ返しが欲しい!」というニードを実現化させたものです。
ターナー部分は燕三条の刃物メーカーが販売している市販品を使用し、持ち手の部分を3Dプリンタで製作しました。
持ち手の部分を変えてみたり、ターナーの角度を変えてみたり、試行錯誤を色々しつつ、様々なフライ返しが誕生しました。メイカソン後に行われるリデザインカフェというイベントで実際に製作物を使用し、お好み焼きを皆で作って食べたとか。
蛇口型ペットボトルオープナー
握力がないと割とあけにくいペットボトルの蓋を軽い力で開けられるように工夫したオープナーが「蛇口型オープナー」。
ペットボトルのトップにつけて軽い力で開けられるように工夫されています。
これ、色もカラフルで普通に可愛いですよね?販売もしているそうですが量産しているわけではなく、一つ一つ3Dプリンターで出力しています。希少かもしれません。
手の固定具
手の固定具を対象者に合わせたものを3Dプリンタで製作。これには色々と試行錯誤の製作品があり、脳性麻痺の方の「ギターをかっこよく弾きたい!」というニードに一役買いました。
実際は保持が難しい指ではないところでピックを上記装具へ固定し、腕を動かして演奏する装具を製作しました。
まっすぐに文字を書くための道具
上左の写真もメイカソンで文字を書く際文字が重なってしまい可読困難になるというニードノウアの課題に応えて誕生した「文字が重ならずに書けるようになる道具」のプロトタイプをアクリルで再現したものです。カットはレーザーを使用しています。
日常生活に工夫とアイデアを。
ファブラボ品川様はこのような活動を通して、福祉という枠組みを超え、人々がほしいと思っているものをどうやって実現していくかということを周りを巻き込んで実現していきます。そのような取り組みは、ちょっと工夫をしたらもっと生活が楽しくなるということをハンディキャップに関わらず追求していく実行力が有るからこそ上手くワークしているのだと感じました。
スプーン等の持ち手。好みやその人の個性に合わせて3Dプリンターで実現する。
真ん中の黒い製品は、麻痺障害などで手を握る方向への緊張が常に高く、指を伸ばしにくくなる方向けに、その方へ合ったストレッチ器具としての自助具。3Dスキャナーを活用することで、ジャストサイズで製作することができます。
画像右には、車椅子ブレーキレバー延長ハンドル。PETGとTPUで造形された手に優しくカラフルなレバーはお出かけも楽しくなりそうです。
他にも見ているだけで心が弾んでくるような楽しくデザイン性のあるアイデア製品がたくさんあります。どれもがニードノウアの声を反映した実用的且つ日常を彩ってくれる楽しい色彩になっています。
展示会へ出展した時の際のセットされた展示物。QRコードを読み込むと製品に関する情報などが表示されるとのことです。
ファブボット「かんなちゃん」
2016年頃の話になりますが、当社でもイベントに参加させていただいた、ファブボット「かんなちゃん」というロボットも関わっています。ファブラボ品川のファウンダー濱中 様が当ラボ設立前後あたりに ファブラボ関内 様や他メンバー様とともに手掛けました。
ルーツは東京都市大学小池研究室で生まれた「マグボット」で、ファブボットはそのダウンサイジング版。プラカップ入りで簡単に持ち運べる愛嬌のある作りになっています。Raspberry PiとArduinoをつないでScratchという画面上で視覚的に操作するプログラム言語制御でLEDの光をコントロール、首振りなどの人間らしい動作も作り出しています
要の部品はレーザーでカットされ、キットとしてワークショップで配布し製作されました。電子工作は親子で参加するのも楽しいですね。希望があればまた開催していただけるかも。
レーザー加工機のご紹介
非常に興味深いものが多く、レーザー加工機の写真を撮り忘れましたが、ご紹介します。ファブラボ品川様でご使用のレーザー加工機は2000-2002年頃販売されていたM-300という機種になります。およそ20年も前のものが変わらず使用されており、買い替えの必要のない堅牢な機種だと感じます。※下記写真はカタログより抜粋
ファブラボ品川 様 の今後。
ファブラボ品川 様は、今後、メイカソンを通じて大きなムーブメントを試みています。来年「2020 TOMメイカソン TOKYO」というものを開催されます。
https://makeathon.tokyo/
共同で開催されるTOM様はイスラエルの非営利団体で、同じコンセプト・ビジョンを通じファブラボ品川様とイベントを開催することになりました。
デジタルファブリケーションが未来の私達の生活を豊かにしてくれるでしょう!
お話をしてくださったファウンダー 濱中様。一級建築士の資格をお持ちになり、「ハマナカデザインスタジオ」も経営されています。メイカソン及びその他様々な多岐に亘る活動は、作業療法士でありディレクターの林様や他のメンバー達と共に取り組まれています。
名称 |
FabLab Shinagawa / ファブラボ品川 |
所在地 |
東京都品川区中延4-6-15 〒142-0053 |
アクセス |
東急大井町線/都営地下鉄浅草線 「中延」駅前 ※都営浅草線でお越しの際は A3 出口をご利用ください。 |
Webサイト |
https://fablab-shinagawa.org/ |
お問い合わせ |
info[a]hamanakadesignstudio.jp ([a]を@に打かえてください) |